グラファイト加工機のワーク自動交換システムの開発

 Development of auto work changing system for graphite machining
Takeichi TERADA, Kiyoshi KAMIYA, Toru YOSHIDA


1. はじめに

    当社ではおもにインジェクション金型を製作しているが、金型の細部の加工において、型彫り放電加工は欠かかせない加工方法である。複雑で大型の金型では、1個の金型の放電加工用にグラファイト電極を100個近く製作することがある。これだけの数のグラファイト電極を短期間で製作するには、複数のワークを連続して自動加工する技術が必要である。

    これまで当社では、比較的大型のグラファイト加工機のテーブル上に、ワークを固定する治具を複数並べることで、複数個の連続加工を実現していた。しかし、この方法では連続加工できる個数に制約が多く、大型のグラファイト加工機が必要なため、コスト的にも問題があった。

    今回、このような問題を解決するために、小型のマシニングセンターとロボットを組み合わせたワーク自動交換システムを開発したので紹介する。 

2. 市販のワーク自動交換システム

    今回の開発の前に、当社の希望にあったグラファイト加工機が市販されていないか調査をしたところ、工作機械メーカー2社からワーク自動交換機能が追加できる機種が販売されていることが分かった。また、通常の工作機械にワーク自動交換機能を追加する工事を請け負ってくれる企業も見つかった。

    しかし、いずれもワーク自動交換機能の追加だけで1,000万円以上が必要となる。少ないコストで、必要とする機能を実現するために、小型の汎用的なマシニングセンターとロボットを組み合わせる方向で開発を進めることになった。 

3. システムの構成

    図-1にシステムを構成する要素と、各々の関係を示す。工作機械やロボット、チャック、搬送装置の部材などは外部から調達しているが、それらの接続や組み立て、調整、制御のためのソフトウェア開発はすべて自社で行った。

    図-1 システムの構成

    次に、個々の構成要素について説明する。

    工作機械本体 - ファナック(株)のROBODRILL α-T21iEs

      幅995mm、奥行き2210mmというコンパクトなマシニングセンターで、グラファイト仕様ではない。スプラッシュガードはしっかりしており、外部への粉塵の漏れはない。ボールねじなどへの粉塵の進入を防ぐために、数箇所にシートを取り付けた。今のところ粉塵の進入はなく、半年に一回程度の手入れでグラファイト加工にも十分耐えられるものと考えている。

      ロボット標準パッケージとして購入したため、NCから制御できる横自動ドアがついている。また、ロボットを載せる台も付属している。

    CNC装置 - ファナック(株)のFANUC Series 31i-A5

      高速、高精度な制御により、高い三次元形状加工性能を持つ。また、外部入出力機能も豊富である。

    オートチャック - システム・スリーアール(株)のマクロブロックオート

      スイッチでチャックをオンオフできるオートチャック装置である。CNC装置から空圧でオンオフ制御できるように少し改造を行った。

    ロボット - ファナック(株)の万能小型ロボット、LR Mate 100iB

      ロボット標準パッケージとしてROBODRILL α-T21iEsとセットで購入した。同時5軸制御で、ワーク搬送には十分な機能を持つ。

    ロボットハンド - 自作

      小型の平行チャックを購入し、自作のグリッパー爪を取り付けている。

    ワーク搬送装置 - 自作

      NCの外部入出力機能で2個の空圧シリンダーを制御し、送りと位置決めを行っている。1列に3個のワークを置くことができ、10列で30個まで一度に加工することができる。

    DNC - CAP-DNC

      自社開発のDNCソフトウェアである。ロボットや搬送装置を制御するための指令はサブプログラムとして、DNCシステムに登録してあり、比較的簡単なNCプログラムで複数ワークの連続自動加工ができるようになっている。

    集塵装置 - アマノ(株)の小型汎用集塵機PiE

      ワーク付近に集塵機のダクトを設置して集塵を行っている。

4. テスト結果

    図-2は完成して運用中のロボットと搬送装置である。すでに100個程度の電極を加工しているが、このシステムに起因するトラブルはほとんど起こっておらず、順調に稼動を続けている。

    大型のグラファイト加工機に複数の治具を並べて連続加工するこれまでの方法に比較して、次のような長所を持つことが分かった。

    • ワークを治具に固定する作業が、搬送装置に並べるだけになり、簡単になった。
    • 治具ごとに設定していたワーク座標系が1個になり、NCのメインプログラムを作るのが簡単になった。
    • ワークの個数の制限がなくなり、一度にたくさん加工できるようになった。

     

    図-2 運用中のロボットと搬送装置

    図-3はシステム・スリーアール社製オートチャック(system 3R Macro Block Auto)にワークを固定した様子である。ワークの下側にはマクロベースホルダーとドローバーと呼ばれる部品があり、正確にチャックに固定される。このオートチャックでは、ロボットを使ったワークの脱着が考慮されており、確実な脱着ができる。ワーク自動交換システムを構成する要素の中で特に重要なものである。

    図-3 システム・スリーアール社製オートチャックとワーク

5. 放電加工への展開

    このシステムで利用しているシステム・スリーアール社製のオートチャック機構は放電加工機でも利用することができる。当社では、このオートチャックとロボットを利用して、ATCのない古い放電加工機に、ATC機能を追加してレトロフィットを行っている。

図-4 ATCのない放電加工機に追加したロボットを使ったATC機能

6. 今後の課題

    6.1 NCメインプログラムの作成

    このシステムでは、ロボットと搬送装置の制御をNCプログラムで行っている。これらの制御のためのNCプログラムはサブプログラムにしているが、NCメインプログラムには、このサブプログラムの名前を適切な位置に記述する必要がある。難しい作業ではないが、いくぶん面倒なので、こういったロボット制御のことを意識しないで自動的にNCメインプログラムを作れるようにしたいと考えている。

    6.2 電極の形状加工のための全自動CAMシステム

    今回の開発で、グラファイト加工機の長時間自動運転が可能になった。このことにより、グラファイト電極加工のキャパシティは飛躍的に高まった。しかし、三次元形状加工用のNCプログラムを準備する工程はこれまでと変わっていないため、この準備段階が生産能力のボトルネックになってくると考えられる。

    当社ではグラファイト電極加工で使用する工具の種類を標準化して少数に限定している。また、金属材料に比べてグラファイトは被削性が良く、比較的簡単な加工方法で済む。こういったことから、このグラファイト電極加工機専用に、工程設計まで自動で行うような三次元CAMシステムがあれば、さらに生産性を向上させられるものと考え、CAMシステムの開発を始めたところである。

    6.3 グラファイト以外のワークへの応用

    このシステムの仕組みは特にグラファイトに限定されるものではなく、システム・スリーアール社製オートチャックが使えるワークであれば、金属材料にも応用することができる。

7. まとめ

    ひとつひとつ形状が異なる放電加工用グラファイト電極であるが、ワークを自動交換して連続加工するシステムを実用化することができた。また、既存の技術に比べて大幅なコストダウンを達成することができた。 


2005年12月12日
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最終更新日:2005年12月12日