ロボットを使った放電加工機のATCの開発

Development of auto tool changing system for electric discharge machining
Takeichi TERADA, Toru YOSHIDA


1. はじめに

    当社ではおもにインジェクション金型を製作しているが、金型の細部の加工には型彫り放電加工を多用している。しかし、放電加工は切削加工に比べて加工速度が遅く、夜間休日の自動運転で加工の遅さをカバーしなくてはならない。

    長時間の自動運転ではATC(自動工具交換)機能は必須条件と言える。最近はATC機能付き放電加工機は当たり前のものになったが、当社にはATC機能を持たない古い放電加工機があり、担当者は電極の交換のため、やむをえず休日出勤していた。

    今回、この問題を解決するため、放電加工機の横に据え付けたロボットによってATC機能を追加し、レトロフィットを行ったので紹介する。

 2. 対象の放電加工機

    今回、レトロフィットを行った放電加工機は10年ほど前に導入した株式会社ソディックの汎用型NC放電加工機A5である。導入した当時、既にATCはオプション機能として設定されていたものの、まだ特別なオプションという位置付けであった。そのため、かなり高価であり、その当時は導入は見送っている。

    放電加工機はマシニングセンターなどに比べると機械的な傷みが少なく、長期間使用できる。当社で使用しているA5放電加工機も、今のところ性能が低下するといったことはなく、レトロフィットを行う価値があると考えた。

     

    図-1 ソディック A5

 3. 電極自動交換システムの構造

    図-2 放電加工機と電極交換装置の配置

    図のように放電加工機の横に電極ストッカーと直交ロボットを、浴槽内に電極を中継する台を配置している。次に個々の要素について説明する。

    放電加工機 - (株)ソディックA5

    ATC機能はついていないものの、system3Rなどのオートチャックをオンオフするための補助機能はついており、チャックを制御するための電磁バルブを追加した。このチャックを制御する信号線をロボットにも接続して、ロボット側からチャックの状態を監視できるようにした。

    数値制御電源装置 - (株)ソディック NF40

    NCプログラムを必要としない制御装置であるが、今回はNCプログラムによって電極交換を行うため、ソディックMARK20相当のNCプログラムによって制御する方式にしている。今回は放電加工用のNCプログラムを生成するシステムも開発した。

    オートチャック - システム・スリーアール(株) マクロチャックオート

    当社では電極加工の芯だし自動化のためにシステム・スリーアール日本(株)のチャッキングシステムを利用している。そのため、この放電加工機にも同社のオートチャックを取り付けている。

    ロボット - ヤマハ発動機(株) MXYX直交型3軸ロボット

    比較的ティーチングが容易であることから直交型3軸ロボットを採用した。X軸850mm、Y軸650mm、Z軸350mmのストロークがある。

    電極ストッカー

    放電加工機周辺の空きスペースに合わせて自作した。この電極ストッカーはロボットの据え付け台も兼ねている。電極ストッカーには二股になったフォークが15本取り付けてあり、電極ホルダーの裏側に取り付けたドローバーの溝をフォークに差し込んで電極を固定している。

    電極中継台

    ロボットと放電加工機のヘッドの間で電極を受け渡すことは危険ではないかという考えから、中継台を経由する方式とした。

4. 放電加工NCプログラム

    (株)ソディックのNFタイプの制御装置ではNCプログラムを必要としないが、NCプログラムで電極交換を行う都合でNCプログラムを使って運転する方式にしている。今回は、電極交換の指令が織り込まれたNCプログラムが自動的に作られるような放電加工CAMシステムを開発した。

    次のような画面で放電加工の条件を設定すると、適切な放電加工条件を選択してソディックMARK20形式のNCプログラムを出力する。

    図-3 放電加工条件の設定画面

    今回は電極を交換して連続で放電加工ができるため、複数の工程を設定することができる。図-4は複数の工程を並べて表示して設定の内容を確認したり、加工順序を編集したりする画面である。

    図-4 放電加工工程のリスト

5. 結果

    図-5に完成したATC装置を示す。この装置と放電加工CAMから出力されたNCプログラムによって、15個までの電極を使った連続運転ができるようになった。

    当初はストッカーに30個程度の電極を置けるようにする計画だったが、電極の大きさに対する制限がきついため、図-6に示すように15個のレイアウトに変更した。現在のレイアウトでは、X方向150mm、Y方向150mm、Z方向170mmが電極の大きさの制限になっている。

図-5 放電加工機とロボットを使ったATC装置

 

図-6 自作した電極ストッカー

6. 問題点

    放電加工条件

    今回、開発した仕組みでは、ソディックのNFタイプ制御装置の特徴である、加工条件の自動調整機能が使えなくなってしまった。しかし、このNFタイプ制御装置は、異常放電を防止することを優先して加工条件を調整する傾向が強く、加工速度が極端に遅くなることがある。したがって、自動制御とNCプログラムのどちらが優れているかは判断が難しい。

    電極交換の速度

    放電加工機の早送り速度はマシニングセンターなどに比べて著しく遅い。ソディックA5の場合は1000mm/min程度である。そのため、電極交換に要する時間も長くなる。ヤマハ発動機のMXYXロボットにも、X軸方向の移動で振動を起こしやすいという問題があり、かなり速度を落として運転している。結果的に、電極交換には2分程度かかってしまった。

    しかし、型彫り放電加工は、1個の電極につき短くても10分、長いと数時間という長時間の加工となるため、この程度の交換時間は無視できる範囲だと考えている。

7. まとめ

    放電加工機は長期間使える設備であるが、金型製作の納期短縮が進む中、ATC機能がないものは使われなくなる傾向があった。しかし、ロボットを使ってATC機能を付加することで、低コストなレトロフィットを行い、既存の設備の有効活用をはかることができた。


2005年12月22日
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最終更新日:2005年12月22日