4軸マシニングセンターを活用したスライドコア加工システムの開発

 Development of machining system for Slide-Core
Masaru YASUDA, Toru YOSHIDA


1. はじめに

    金型の設計や製造工程を複雑にする要因としてアンダーカット処理をあげることができる。アンダーカット処理の中でも多用するのがスライド構造である。金型部品の中で加工に最も時間がかかるのはおも型(上下型)だが、スライドコアはその次に時間がかかることが多い。

    また、金型の部品はマシニングセンターのテーブルに平行に置いて加工することがほとんどだが、スライドコアは斜めの穴や面を持っており、いろいろな角度から加工しなければならない。このため、加工の自動化が難しく、やっかいな製造工程となっていた。

    今回、4軸制御の横型マシニングセンターにスライドコア専用に開発した治具を取り付け、スライドコアをブロック材から形状加工まで自動加工するシステムを開発したので紹介する。

2. スライドコアの形状と大きさ

    図-1 インジェクション金型用スライドコア
     長さ約100mm

    図-1は当社でインジェクション金型用に製作したスライドコアである。インジェクション金型用のスライドコアは比較的小型のものが多く、全ての工程で自動加工できるなら、先端の成型品の形状に相当する部分の加工を含めても1日に4個は加工できそうな大きさである。

    しかし、実際には加工する向きが4方向あり、二次元加工を終えてから、三次元加工を行っているため、5回以上のワークのセッティングを必要とする。このため、1個のスライドコアの加工に2日から3日を要しているのが現実であった。

3. スライドコアを様々な方向から加工するしくみ

    3.1 4軸制御横型マシニングセンター

    図-2は、おもに小物部品を加工するために導入した(株)牧野フライス製作所横型マシニングセンターa61である。

    加工テーブルをB軸として回転させることができる。また、部品加工では頻繁にワークのセッティングが必要なので、パレットチェンジャも装備している。

    高精度なマシニングセンターで、B軸の回転精度、再現性ともに申し分ない。

    図-2 牧野フライス製作所 a61

     

     

    3.2 スライドコア取り付け治具とイケールへの取り付け

     

    図-3 スライドコア取り付け治具

     

    図-4 イケールに取り付けた状態

    図-3はスライドコアの加工のために専用に設計した治具である。この治具にはスライドコアを取り付ける基準面が4箇所設けてあり、図-3のように最大で4個の材料を取り付けることができる。

    治具の裏面にはシステム・スリーアール(株)のチャックDelphinへの差込み口がついており、図-4のようにマシニングセンターのイケールにワンタッチで取り付けることができる。このイケールには4箇所に、この治具が取り付けられるので、最大で16個のスライドコアが連続で加工できる。

    スライドコア取り付け治具とDelphin、マシニングセンターなどを総合した最終的な繰り返し位置精度は約0.01mmを実現することができた。また、この精度を維持するのに特別な技能は必要としない。

    Delphinはsystem3R社の商標です。

4. ソフトウェアのしくみ

    B軸を回転して加工するために、座標変換の仕組みが必要である。また、スライドコアの形状はパラメトリックに表現できることから、スライドコア加工専用のソフトウェアを開発した。

    ソフトウェアの形式は一般にウィザードと呼ばれるもので、数個のダイアログボックスが次々と表示される。アプリケーションプログラムのセットアップなどでよく使われており、おなじみのものである。

    図-5 側面図の寸法入力画面

    図-6 正面図の寸法入力画面

    図-5と図-6は寸法を入力するダイアログボックスである。これらの寸法を入力するだけで、NCプログラムを作ることができ、モデリングや作図といった作業はいっさい必要ない。

    また、使用する工具と切削条件は標準化してあり、工具番号と切削条件との対応という形で、あらかじめシステムに登録してある。

    したがって、NCプログラムを作る作業は、図-7のダイアログボックスで工具番号を選ぶだけである。標準的な加工を行う場合は何も変更する必要がないので、ほとんどの場合は、この作業は素通りすることになる。

    図-7 工具選択ダイアログボックス

     

5. テスト結果

    図-8は加工テーブルを回転してストッパー面の角度に合わせて加工している様子である。

    牧野フライス製作所a61の高精度なB軸制御のおかげで、加工テーブルの回転にともなう誤差は発生していない。

    図-8 斜めのストッパー面の加工

     

     

    図-9は加工テーブルを270度回転した状態(B軸270度)で三次元形状加工をしている様子である。

    複数のワークを並べて、様々な角度から加工しているが、連続自動運転が可能になった。

    図-9 B軸270度の状態での三次元形状加工

     

 

    当社で頻度の高い100mm×50mm×50mm程度の大きさのスライドコアの場合で、従来の加工方法に比べて、次のように作業時間と加工時間を短縮することができた。

    作業内容

    従来の加工方法

    新しく開発した加工方法

    固定用のネジ穴加工

    なし

    30分程度

    二次元加工

    汎用フライスで1日

    約1時間(全自動)

    三次元加工

    途中で段取りがあるため1日

    約3時間(全自動)

    作業時間

    約10時間

    約1時間

    加工時間

    自動運転できないため2日間

    約4時間

    このように、作業時間と加工時間の大幅な短縮を実現しただけでなく、このシステムを使った加工方法には、次のような効果があった。

    1. 汎用フライスを使う作業がほとんどないので、特別な技能を必要としない(誰がやっても同じように加工できる)。
    2. 段取りが1回だけなので、芯だし不良による誤差が発生しない。
    3. 標準化した工具を毎回使うので、加工精度を向上させるノウハウを蓄えることができる。
    4. 工期が短いので、設計変更などによる再製作を行っても金型全体の納期にはほとんど影響しない。

6. まとめ

    金型のスライドコアは1個ずつ異なる一品ものだが、特別な技能を持たない人でも、量産の部品加工のように簡単に加工できるようになった。また、従来のおもに汎用フライスを使った加工に比べて、作業時間と加工時間を大幅に短縮することができた。

    スライドコアのようにパラメトリックに形状を処理できる部品では、今回のような治具やソフトウェアを開発することで、生産準備と加工を自動化できる可能性がある。他にも、このような考え方を応用できる部品がないか検討してみたい。


2006年1月30日
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最終更新日:2006年1月30日